行列の基本|演算と逆行列の求め方、連立方程式への応用まで
行列は、数を長方形に並べたもので、連立方程式や図形の変換(回転・拡大縮小)をまとめて扱うのに便利な道具です。ここでは2行2列の行列を中心に、基本の演算から逆行列までを整理します。
行列の基本
行列の表し方
数を縦横に並べたものを行列といい、横の並びを行、縦の並びを列といいます。2行2列の行列は次のように書きます。
A = [[a, b], [c, d]](1行目がa, b、2行目がc, d)
行列の和・差
同じサイズの行列同士は、対応する成分をそのまま足し引きします。
[[a,b],[c,d]] + [[e,f],[g,h]] = [[a+e, b+f], [c+g, d+h]]
行列のスカラー倍
行列にkをかけると、すべての成分がk倍されます。
k×[[a,b],[c,d]] = [[ka, kb], [kc, kd]]
行列の積
2行2列の行列の積
行列の積は、通常の数の掛け算とは異なるルールで計算します。左の行列の「行」と右の行列の「列」の対応する成分をかけて足し合わせます。
[[a,b],[c,d]] × [[e,f],[g,h]] = [[ae+bg, af+bh], [ce+dg, cf+dh]]
積の性質
行列の積は、一般には交換法則が成り立ちません(AB ≠ BA となることが多い)。一方、結合法則(AB)C = A(BC)や分配法則A(B+C) = AB+ACは成り立ちます。数の計算とは異なるこの「交換法則が成り立たない」という性質は、行列を学ぶ上で最も重要な注意点です。
単位行列
E = [[1,0],[0,1]] を単位行列といい、どんな行列Aに対してもAE=EA=Aが成り立ちます。数の計算における1と同じ役割を果たします。
逆行列
定義
行列Aに対して、AB=BA=Eとなる行列Bが存在するとき、BをAの逆行列といい、A^-1と書きます。
逆行列の求め方(2行2列の場合)
A = [[a,b],[c,d]] のとき、逆行列は次の式で求められます。
A^-1 = (1/(ad-bc)) × [[d,-b],[-c,a]]
ad-bcの値を行列式(またはdetA)と呼びます。行列式が0のとき、その行列は逆行列を持ちません(0での割り算ができないため)。
例:A=[[2,1],[1,1]]のとき、行列式は2×1-1×1=1。逆行列は A^-1 = (1/1)×[[1,-1],[-1,2]] = [[1,-1],[-1,2]]
行列の応用
連立方程式への応用
連立方程式 ax+by=p、cx+dy=q は、行列を使って [[a,b],[c,d]]×[[x],[y]] = [[p],[q]] と表せます。両辺に左から係数行列の逆行列をかけると
[[x],[y]] = A^-1 × [[p],[q]]
という形で、x、yをまとめて求められます。
図形の1次変換
行列は、点(x, y)を別の点(x’, y’)に移す「1次変換」を表すのにも使われます。たとえば原点を中心にθ回転させる変換は、次の回転行列で表されます。
[[cosθ, -sinθ], [sinθ, cosθ]]
この行列を点のベクトル[[x],[y]]に左からかけると、θだけ回転した点の座標が得られます。
まとめ
行列の計算では、和・差・スカラー倍は成分ごとにそのまま計算できますが、積だけは「行と列の対応」という特別なルールに従い、かつ交換法則が成り立たないという点に注意が必要です。逆行列は行列式(ad-bc)が0でないときだけ存在し、連立方程式を1つの式でまとめて解いたり、図形の回転・拡大縮小を表現したりする場面で活用されます。