百人一首61〜80番の覚え方―一字決まりと大山札の攻略法
百人一首61番から80番までの20首には、一字決まりの歌が2首、大山札の片割れが2首含まれる、決まり字の学習に適した区間です。即興で歌を詠んだ女房のエピソードや、前の範囲でからかい役として登場した人物の歌もあり、範囲をまたいだつながりを意識すると記憶に残りやすくなります。この記事では61〜80番の中から代表的な歌を取り上げて解説します。
この範囲を代表する一字決まりの歌
70番「さびしさに」
70番、良暹法師の「さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ」は、上の句の最初の1文字「さ」だけで下の句が確定する一字決まりの歌です。寂しさに耐えかねて外に出てみても、どこも同じように寂しい秋の夕暮れだった、という歌の内容そのままに、覚えてしまえば「さ」の音を聞いた瞬間に取れる歌になります。
77番「瀬をはやみ」
77番、崇徳院の「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ」も一字決まりで、「せ」で始まる歌はこの1首だけです。川の流れが岩に阻まれて2つに分かれても、その先でまた1つになるように、今は離れていてもいつか必ず逢おうという強い恋心を詠んだ歌で、決まり字の短さと歌の情熱的な内容がセットで印象に残ります。
大山札の片割れが2首
64番「朝ぼらけ」
64番、権中納言定頼の「朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木」は、上の句の6文字目まで読まれないと下の句が決まらない大山札の歌です。同じ「あさぼらけ」で始まる31番(21〜40番の範囲)とは、6文字目の「あ」「う」で分かれます。なお、この定頼は前の範囲で紹介した60番・小式部内侍を「代作を頼んだのでは」とからかい、逆にやり込められた張本人でもあります。
76番「わたの原」
76番、法性寺入道前関白太政大臣(藤原忠通)の「わたの原漕ぎ出でて見れば久方の雲居にまがふ沖つ白波」も大山札の1首で、同じ「わたのはら」で始まる11番と6文字目の「や」「こ」で区別します。広い海に漕ぎ出して見た景色を詠んだ、スケールの大きな歌です。
エピソードで覚える61番
61番、伊勢大輔の「いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に匂ひぬるかな」には有名な成立の逸話があります。奈良から献上された八重桜を受け取る役目は本来、紫式部が担うはずでしたが、新参の伊勢大輔に譲られました。藤原道長からその場で歌を詠むよう命じられた伊勢大輔は、即興でこの歌を詠み、居合わせた人々から称賛を受けたと伝えられています。
効率的に覚えるコツ
決まり字の長さで優先順位をつける
70番・77番のような一字決まりは最優先で確実に覚え、64番・76番のような大山札は対になる歌とセットで練習すると効率的です。
人物のつながりを意識する
64番の定頼と60番の小式部内侍のように、範囲をまたいで人物がつながっている歌があります。歌人同士の関係を知ると、単独の暗記よりも記憶に残りやすくなります。
まとめ
百人一首61〜80番は、一字決まりの70番・77番、大山札の64番・76番、即興の逸話が残る61番など、決まり字と背景の両方から攻略できる20首です。前後の範囲とのつながりも意識しながら、決まり字の短い歌から優先して覚えていきましょう。