磁石の実験|身近なもので磁力の強さと電磁石を調べる自由研究
冷蔵庫にくっつく磁石は、なぜか一部の金属だけを引きつけ、木やプラスチック、アルミニウムには全くくっつきません。磁石には目に見えない磁力の性質がいくつも隠れており、身近な材料だけで手軽に確かめることができます。この記事では、磁石の性質を調べる実験の手順と、その仕組み、レポートのまとめ方を紹介します。
用意する材料と道具
磁石につくもの・つかないものを調べる実験
- 磁石(棒磁石や丸型のフェライト磁石など)
- 鉄くぎ、スチール製の空き缶、クリップ(いずれも鉄製のもの)
- 10円硬貨、100円硬貨
- アルミホイルまたはアルミ缶
- 木の割り箸、プラスチックの消しゴム、ガラスのコップ
- 輪ゴム、コピー用紙
磁力比較・透過実験
- 磁石2〜3種類(強さの違うものがあると比較しやすい)
- ゼムクリップ(30個程度)
- コピー用紙、プラスチックの下敷き、水を入れたコップ、ガラスのコップ
方位磁針づくり
- 縫い針
- 発泡スチロールの小片(1cm角程度、食品トレーの切れ端でよい)
- 洗面器などの容器と水
- 市販の方位磁石(答え合わせ用)
電磁石づくり
- エナメル線(直径0.3〜0.5mm程度、2m程度)
- 太めの鉄くぎ(長さ7〜10cm程度)
- 乾電池(単一または単三)
- 紙やすり
- セロハンテープ
- ゼムクリップ(磁力測定用)
磁石を使ううえでの注意
ネオジム磁石のような強力な磁石を使う場合は、心臓ペースメーカーなどの医療機器や、クレジットカード・キャッシュカード・定期券などの磁気カードに近づけないようにしましょう。医療機器の動作に影響を与えたり、磁気カードのデータを消してしまったりする恐れがあります。
実験1:磁石につくもの・つかないものを調べる
鉄・ニッケル・コバルトなど、磁石に強く引きつけられる金属を「強磁性体」と呼びます。身の回りにある品物を集めて、磁石にくっつくかどうかを一つずつ確かめてみましょう。
手順
- 家の中から10種類程度の品物を集める。鉄くぎ、スチール缶、クリップ、10円硬貨、100円硬貨、アルミホイル、木の割り箸、プラスチックの消しゴム、ガラスのコップ、輪ゴムなど、素材が異なるものをそろえるのがポイント。
- 磁石を一つずつゆっくり近づけ、くっつくかどうかを表に「○」「×」で記録する。
- 予想と結果を比べる。
結果と解説
鉄くぎ・スチール缶・クリップのように鉄を含むものは磁石にくっつきます。一方、アルミホイル、10円硬貨、100円硬貨、木、プラスチック、ガラスは磁石にくっつきません。
とくに硬貨は「金属だから磁石につくはず」と思われがちですが、実際にはつきません。10円硬貨は銅を主成分とする青銅(銅約95%、亜鉛3〜4%、スズ1〜2%)でできており、100円硬貨は白銅(銅75%、ニッケル25%)でできています。ニッケルそのものは強磁性体ですが、100円硬貨に含まれる割合は25%と低く、銅との合金になることで磁石にはつかなくなります。「金属=磁石につく」ではないことを実感できる実験です。
実験2:磁力の強さを比べる
クリップ連結法で磁力を比較する
磁石の先にゼムクリップを1個つけると、そのクリップの磁力によってさらに次のクリップがくっつきます。これを数珠つなぎにしていき、何個まで連結してぶら下げられるかを数えましょう。棒磁石とフェライト磁石など、種類の違う磁石で同じ実験を行い、連結できた個数を比較すると、磁石ごとの強さの違いが数値でわかります。
距離による磁力の変化
磁石とクリップの間にコピー用紙を1枚ずつ挟んでいき、クリップが磁石にくっついていられる限界の枚数を調べます。紙の枚数が増える(=磁石とクリップの距離が離れる)ほど、磁力は弱くなっていきます。紙を数枚挟んだだけでクリップが落ちてしまう磁石と、10枚以上挟んでも持ちこたえる磁石があることに気づくはずです。
実験3:磁石は物を透過するか
紙、プラスチックの下敷き、水を入れたコップ、ガラスのコップをそれぞれクリップと磁石の間に挟み、磁石を動かしたときにクリップが追従するかを確かめます。紙・下敷き・水・ガラスはいずれも磁石ではない物質(非磁性体)なので磁力を大きく妨げることはなく、クリップは磁石の動きに合わせて動きます。ただし、挟むものが厚くなったり、磁石とクリップの距離が離れすぎたりすると、磁力が届かなくなり反応しなくなります。
実験4:方位磁針を手作りする
- 縫い針を用意し、磁石のS極(またはN極)を使って、針の一方の端からもう一方の端へ向けて一定方向に30〜50回程度こする。往復させず、必ず同じ向きに一方通行でこするのがポイント。
- 磁化した縫い針を、発泡スチロールの小片に刺すか輪ゴムなどでとめる。
- 洗面器やお椀に水を張り、針を刺した発泡スチロールをそっと浮かべる。
- 針が回転して静止するまで待ち、指している向きを市販の方位磁石と比べる。
針は南北を指して止まります。これは地球そのものが大きな磁石になっており、北極付近と南極付近に地磁気の極があるためです。自由に回転できる状態の磁化した針は、地磁気の向きに沿って南北を指すようになります。
実験5:電磁石を作る
- 太めの鉄くぎにエナメル線を巻きつける。同じ向きに、なるべく隙間なく50回巻く。巻き終わりの見た目や巻き数を記録しておく。
- エナメル線の両端を10cmほど残し、紙やすりで表面のエナメル被覆をきれいに剥がす。エナメル線は表面が絶縁体の樹脂で覆われているため、被覆を剥がさないと電気が流れない。
- 被覆を剥がした両端を、乾電池のプラス極・マイナス極にそれぞれ接続する(セロハンテープで固定すると安定する)。
- くぎの先端にゼムクリップを近づけ、何個持ち上がるかを数える。
- 巻き数を100回、150回と増やして同じ実験を繰り返し、クリップの数を比較する。
安全上の注意
電磁石は乾電池をエナメル線で直接つないだ、ショートに近い状態になっています。つなぎっぱなしにするとエナメル線や電池が熱くなるため、実験のときだけ接続し、数秒〜十数秒でいったん外すようにしましょう。発熱によるやけどや、電池の液漏れにも注意してください。
なぜ鉄は磁石にくっつき、アルミや銅はくっつかないのか
金属の中の原子には、電子の「スピン」と呼ばれる小さな磁石のような性質があります。鉄・コバルト・ニッケルのような「強磁性体」では、このスピンの向きが近くの原子どうしでそろいやすく、向きのそろった小さな領域(磁区)ができます。ふだんは磁区がバラバラな方向を向いているため全体としては磁石になっていませんが、外から磁石を近づけると磁区の向きが一斉にそろい、鉄全体が磁化して磁石に引き寄せられます。
アルミニウムなど一部の金属は、磁石にごくわずかに引き寄せられる「常磁性体」です。銅は逆にごくわずかに反発する「反磁性体」です。どちらも力が非常に弱いため、家庭での実験では磁石にくっつく様子を確認できません。10円硬貨や100円硬貨のように強磁性体をほとんど、あるいはわずかしか含まない金属は、こうした理由で磁石につかないのです。
レポートのまとめ方
実験ごとに結果を表にまとめると説得力のあるレポートになります。実験1では「品物名・素材・くっついたか」の一覧表、実験2では「磁石の種類・連結できたクリップの数・紙を挟める枚数」の比較表、実験5では「巻き数・持ち上げられたクリップの数」を折れ線グラフにすると、電磁石の強さが巻き数に応じて増えていく様子が視覚的にわかります。考察では、なぜその金属がくっついたのか(あるいはくっつかなかったのか)を、強磁性体・常磁性体・反磁性体の違いに触れながら説明すると理科的な深みが出ます。
まとめ
磁石の実験は、身の回りの金属を集めるだけで「磁石につくもの・つかないもの」「磁力の強さ」「磁石が物を通り抜けるか」「電磁石の仕組み」まで、幅広い切り口で調べられるテーマです。とくに電磁石は、巻き数を変えるだけで磁力が変化する様子を目で確認できるため、自由研究として深めやすい実験です。安全に気をつけながら、身近な材料で磁力の不思議を確かめてみましょう。